INTRODUCTION

“映画を創る映画祭”発・シナリオ大賞映画化プロジェクト始動!

 函館港イルミナシオン映画祭は“映画を創る映画祭”として、映画に愛される街・函館で1995年より始まりました。翌年1996年にはシナリオ大賞がはじまり、これまでに長編・短編あわせ10本のシナリオが映画化・映像化されてきました。20周年を迎えた2015年に“映画を創る映画祭”が主体となり、函館の街を舞台にしたオリジナルシナリオからの映画創りを目指す<シナリオ大賞映画化プロジェクト>がスタートしました。
 第1弾となるのは2013年度函館市長賞の「函館珈琲」(作:いとう菜のは)。オープンセットのような街・函館を舞台に、函館の街の中に佇む古い西洋風アパート翡翠館に集う若者たちの出会いと葛藤を見事に描いています。監督は、話題を呼んだ『ソウルフラワートレイン』の新鋭西尾孔志。撮影は『天国の本屋~恋火』『乱反射』『スノーフレーク』など函館の街を知り尽くしている上野彰吾。美術には『オー・ド・ヴィ』のベテラン小澤秀高、そして照明には『恋人たち』の赤津淳一。その他にも函館港イルミナシオン映画祭と縁の深い、そして函館に魅了された強力な布陣が集結しました。
 出演者は、主人公の小説家桧山英二に黄川田将也。函館の翡翠館に集まる若者たちには、装飾ガラスの職人を目指す堀池一子に片岡礼子、テディベア作家の相澤幸太郎にはドイツ育ちで新人の中島トニー、ピンホール写真家のヒロイン藤村佐和には元wyolicaのヴォーカルAzumiが映画初出演し主題歌を担当、カフェのマスターには映画祭のディレクターでミュージシャンのあがた森魚。そしてミステリアスな翡翠館の主人にはベテランの夏樹陽子が務めます。

オトナだからこそ抱く、もどかしい孤独がある。
時にはほろ苦く、甘酸っぱい、
まるで珈琲のような映画が函館から誕生しました。

STORY

 函館の街にひっそりと佇む翡翠館。オーナーの荻原時子は、夢を追う若者たちにアトリエ兼住居として部屋を貸し出している。翡翠館に住人になる条件はただひとつ。時子が「翡翠館にふさわしい人」と思うかどうか―。  装飾ガラス職人の堀池一子、テディベア作家の相澤幸太郎、ピンホールカメラ専門写真家の藤村佐和。それぞれが『人生に欠かせないもの』を探し求め、もどかしい孤独の中にいた。
 夏のある日、翡翠館に来るはずであった家具職人藪下に代わり、後輩の桧山英二がやってくる。翡翠館の蔵で古本屋を開くという桧山もまた、他人には触れさせない震える孤独を抱えていた。しかし彼が仕事の合間に淹れるコーヒーには、人の心に届く柔らかい香りがあった。各々が抱えるもどかしい心の小さな棘。コーヒーの柔らかな香りが鼻先をくすぐり、束の間のふれあいがはじまる。
 子供に会えない寂しさを一子は美しいとんぼ玉の中に閉じ込め、相澤は遠い故郷を思い孤独と戦う勇気をテディベアに託す。ピンホールカメラを通して時間を切り取っていく対人恐怖症の佐和。ネットで転売をするだけの古本屋をやる桧山にも、秘密があった。それは若き日に自身が描いた小説「不完全な月」以降、思うような作品が書けず苦悩する小説家としての顔。何も生み出さない自分への怒りと焦り。そして家具職人の夢半ばで他界していた藪下への想いが、桧山の心を突き動かしていく…。

「この街は流れる時間がちがう・・・」

 蔵の隅に置かれた、時子の亡き夫の愛車であった古いオートバイ。桧山は止まったままの時間を動かすように、壊れたオートバイの修理をはじめる。
 そして、バイクのエンジン音が翡翠館に轟いた朝、桧山はここを去る決意を固め時子を訪ねるが、彼女は思いがけないことを話し出す・・・。
 函館の短い夏が終わりを告げる時、コーヒーの香りが心を包み込み、それぞれの人生が動き始める。